岩瀬果樹園は、果樹づくりの専業農家です。農業の場合、忙しい時期になると、相手が生き物であるだけに24時間目が離せなくなり、人間の労働時間も長くなり、休みがとりづらくなるというデメリットがあります。
そこで、家庭内でお互いに仕事を補い合おうという家族協定があり、こうしたルールづくりが農家では進んでいます。家族経営の農家仕事では、暮らしが仕事であり仕事が暮らしです。どの現場でも家族が働く姿を間近に確認でき、お互いをフォローしやすいので、子育ても大切な仕事として、暮らしに組み入れることができます。
こうした営農姿勢は、くだものづくりと人づくりを同じ密度でやっていこうという「分けない合理化」から生まれてきたものでしょう。
現在、岩瀬果樹園では、果樹園に出て働くスタッフに、父・母・わたしの3名を充て、3人の子育て真っ最中の妻は、経理・生産品管理・出荷を担当し、一家総出でフル回転しています。
そうそう、忘れちゃいけないのが、うちの
ロゴマークにもなっている愛犬のチロル。強力な助っ人です。また、チロルが川で溺れているのを助けて、家族の一員にくわわった猫のミルク。こちらも大切な助っ人です。文字通り猫の手を借りたいときに便利です。(笑)
幼いころから果樹という自然を扱う仕事に親しんできた子どもたちも農家の仕事の重要性や楽しさを実感している?ように見えます。
果樹園は、岩瀬一家を支えてくれる生産現場であるとともに、家族がお互いに力を合わせて働くことで生きている喜びを実感する場所です。
子や孫たちの成長をうながす自然道場のような空間でもあり、この家族の団結力やチームワークが、果樹の生育に十分な手間をかけられる理由です。
その努力に果樹もよく応えて、美味しい果実をつけてくれます。家族のだれが欠けても、この美味しさは決して生まれない。だからこそ、わたしたち岩瀬果樹園が製造販売するパッケージには、「岩瀬さんちのぶどう」のように“岩瀬家”を冠して、製造責任を明示するとともに、くだもの栽培からもらった我が家の喜びをお客様とわかちあいたいと思っています。
果樹園は確かに生産現場ではありますが、日ごろ農園には入ったことがない方がたにも果樹園に親しんでいただくために、「見て触って学べる果樹栽培の楽しさ」のような工夫もしてみたい。そんな思いから、JA青年部の活動として小学校が一年を通して行なっている、次郎柿の栽培学習で、講師をしています。摘蕾、摘果、栽培、剪定などを教えています。くだものの魅力を通して、自然の魅力を知ってもらい、やがては農業の魅力に少しでも触れてもらえればと思っています。この子供たちのなかから、将来農家になりたいと思ってもらえる子がひとりでも出てくれたなら嬉しい限りです。
また、農家になりたいと思わなくても、私たちの周りにある自然に目を向け、その雄大さと、厳しさ、美しさを知り、自然と接する生活の楽しさを次世代に知ってもらいたい。そう思っています。
JA豊橋管内で、いま柿生産農家は400世帯ほど。かつては600世帯を超える農家が柿生産に携わっていましたが、しだいに辞めていきました。
ですが、いまでも石巻地区には「柿の木街道」と呼ばれる柿果樹園が延々と広がるエリアがあります。道の両側で経営する農家が、収穫時期になると沿道に無人の販売所を連ねる様はやはり圧巻です。ここでは、ずっと昔からの景色が
いまもなお広がっているのだと感じます。
そんな石巻地区が次郎柿のふるさととして広く定着してくれたら…。それが私たちの思いです。こうした「次郎柿のふるさと=豊橋市石巻地区」を多角的に紹介していき、次郎柿と言えば石巻、というブランドが世界中に浸透する日を目指して私たちはおいしいくだものをつくり続けていきます。
(※石巻地区には嵩山(すせ)・賀茂・玉川・石巻・西郷と5学区で成り立っていますが、次郎柿の8割近くという圧倒的な数量の果樹が西郷学区に集中しています。西郷学区とは岩瀬果樹園がある界隈も含むエリアになります。)